スギ免疫療法を開始したい方に緊急のお知らせ
5月GW開けからスギの免疫療法が開始できる予定でしたが、開始する薬剤が出荷制限がかかってしまい、ご希望通りに開始できなくなってしまいました。
そのため、このフォーム(ここをクリック)に入力していただき、整理番号を先着順に発行し、入荷したときにホームページ(ここをクリック)上でご確認いただく形にさせていただきたいと思います。
なお、当院では確保ができない(院内処方が認められない)ため、特定の薬局との連携をせざるをえない(初回についてはその薬局を使っていただく)ので、その点お含みおきください。
患者様にはご迷惑をおかけいたしますが、ご理解、ご協力をお願いします。
<追加情報>
2023年11月1日現在、薬局から、スギ免疫療法の初期に使う薬剤の入荷が非常に少なくなったとの連絡がありました。
舌下免疫療法について
当院は、アレルギー疾患を専門にしていることもあり、従来から舌下免疫療法も治療選択肢のひとつとして行ってきました。免疫療法は一見新しい治療にも感じますが、それは舌下免疫療法が最近になって実用化されただけであり、皮下注射による免疫療法は減感作療法とも呼ばれ、日本でも50年以上前からありました。治療に使うアレルゲンの量の問題もあり、また注射に通うというハードルもあり、必ずしもメインの治療にはなりませんでしたが、対症療法としてではなく、アレルギー反応そのものを免疫でブロックする治療法ですから、少し言い過ぎかもしれませんが、「治癒」を目標にした治療であることは、今も昔もかわりません。
また、医療機関による治療ではありませんが、漆職人の親方が、新入りの職人見習いの舌下に少量の漆を垂らしてやり、少しずつ量を増やす事で漆アレルギーを起き難くさせる、という事が経験則から慣習的に行われていたということは有名で、これは予防的な免疫療法ともいえます。粉ミルクを少しだけでも飲んでいるな赤ちゃんが牛乳アレルギーにならないということと似ています。また、ある食物を食べるとじんましんがでていたような子どもに、少しずつ症状が出ない程度に食べさせていったら、知らないうちに普通に食べれるようになってしまったということも、一種の治療的な免疫療法と言えるでしょう。(食物アレルギーの免疫療法はリスクもあるので医師に相談してから行ってください)
現在、日本で行うことができる舌下免疫療法は、治療的な免疫療法で、ダニアレルゲンと、スギアレルゲンについてですが、有効率も非常に高く、アレルギーで悩んでいる方にはおすすめしたい治療法です。
このページでは、少し詳しく解説していきたいと思います。
そのアレルゲンが原因になるいろいろな病気に効くはず
免疫療法は、アレルギー反応のもとになる特定のアレルゲンに対して効くわけですから、そのアレルゲンが原因になっているアレルギー疾患すべてに効く可能性があります。
上図で、スギアレルギー(花粉症)のところには、気管支ぜんそくはあえて入れていませんが、確かに、花粉症でぜんそくになるという子は少ないです。それは花粉の粒子が大きいので、気管支の奥深くに到達しにくいからだといわれています。
もちろん、すべてのアレルギー患者さんが、3~4つの病気をかかえているかというと、そうではありません。標的臓器(鼻、気管支、結膜、皮膚など)の過敏性が強くなければ、症状がでないのです。
アレルギー反応(ここでは子どものダニアレルギーや花粉症のアレルギー反応であるⅠ型アレルギーをさします)は、「アレルゲン」「IgE抗体」「標的臓器の過敏性」の3つが揃わないと起きません。
アレルギー反応と無関係にかぜをひいただけで、ぜんそくの症状が出ることもありますし、いくらアレルギーがあっても、皮膚炎だけでぜんそくは全く大丈夫という人もいることからもわかると思います。
しかし、特定のアレルゲンが関与する反応がその患者さんの病気の主な誘因になっているのであれば、アレルギー反応をストップさせることは、多くの病気を同時に良くすることができると思われます。
例えば、同じぜんそくでも、赤ちゃんのゼーゼーは、ほとんどが感染症(かぜ)が誘因であって、ダニアレルギーが原因であることはまずありません。しかし、小学生以上のゼーゼーの多くは、もちろんかぜをひくこともありますが、ダニ(ハウスダスト)のアレルギーが誘因であることが多いです。
私たちは、過去のカルテや、アレルギー検査(血液検査)の結果も参考にしながら、この患者さんは、アレルギー反応が原因で症状が起きていることが多いかどうか、判断します。
アレルギー反応が主な原因であれば、その経路をブロックすることが有効だと思うし、そうでなければ、免疫療法をしても、害はなくても、あまり効果がないと思うので、その判断はとても大切です。
ダニやスギなどのアレルゲンと、標的臓器(鼻、気管支、結膜、皮膚など)を結びつけているのが、アレルゲンごとに担当が決まっているIgE抗体です。この抗体がなければ、アレルギー反応はおきませんし、免疫療法をしても意味はありません。
舌下免疫療法のイメージ
簡単に説明すると、初回はクリニックで、舌下にごく少量のアレルゲンを含むすぐに溶ける錠剤を口に入れてもらいます。舌の下に保持する時間は1分間。少しむずむずしたり痒みを感じる人もいますが、それはアレルギーの人にアレルゲンをなめてもらっているのですから、副作用と呼ぶのものちょっと変かもしれません。むしろそういう人が続けていくうちに何ともなくなってくれば、それが「効いてきた」ということです。
1週間後に再度来ていただいて、特に問題がなければ、2.5~3倍のアレルゲン量に増やします。あとは、毎日それを続けるだけです。最近はずいぶんハードルが下がりましたが、
処方する資格をもつ医師も限定された特殊な治療なので、1ヶ月に1回は来院していただき、状況を確認させていただくことが、治療を続けられる条件(ルール)になっていますので、それを守らないわけにもいきませんが、経過がよく、免疫療法だけの処方が続くようになったら、通院しやすい工夫もしていきますので、医師からすすめられたら、何だか怖い治療だと思わずに、ちょっと前向きに考えてみてください。
治療を開始すると、血液中にはIgG4抗体という、アレルギー反応を防ぐ抗体が作られ、効果は数ヶ月ででてくるようです。ただ、そこでやめてしまうと元に戻ってしまうので、3年ぐらいは続けてほしいというのが、ひとつの目安になっています。長い治療ですが、スギ花粉症の人などは、効果を実感しやすいので、途中でドロップアウトしてしまう人はとても少ない印象です。
治療の効果はどのくらいであらわれるのか
だいたい3ヶ月すると、スギやダニに対する IgG4抗体 が増え、開始から半年もすれば、患者さんも治療効果を実感してくれると思います。とくにスギ花粉症は、「今年はひどかった、軽かった」というように、世間話にもなるぐらいですから、夏ごろからスギの免疫療法を開始した患者さんは次のシーズンには「とても良くなった、他の薬を使う頻度がとても減った」というように、効果を実感してくれます。
ただ、そこで治療を中断してしまうと、もとに戻ってしまうようですから、そこからもコツコツ続けることが大切です。でも、効果を実感しているだけにそこで中断してしまう人はとても少ない印象です。
何歳ぐらいの子どもから開始できるのか
薬そのものに年齢制限はありません。しかし、舌の下にすぐに溶ける錠剤をポトンとおいて、1分間しゃぶっておくということが、理解してできることが必要なので、だいたい小学生以上のお子さまになるかとは思います。
小さいから危険ということではありません。また、症状が重くなってからするべき治療ということでもありません。花粉症のひどい成人がこの治療に取り組んでいることがよくありますが、それは最近になってできるようになった治療だからであって、子どものうちにしておいたほうが、通院の負担も少ないし、これからの生活のQOLもあがるので、おすすめです。
子どものうちからしたほうが良いのか
多くの薬と同様に、まず成人で安全性を確かめた上で、小児に認可されましたし、アレルギーの人にアレルゲンを投与するという心配なイメージもあるかもしれません。でも、よく考えれば、予防接種とよく似ています。できるだけ早くアレルゲンに対して免疫を持つことができれば、標的臓器(鼻、気管支、結膜、皮膚など)が、痛まないようにすることは、悪循環を早く断ち切る、他の薬剤も少なくて済むというメリットがあります。コスト的にもリーズナブルな薬です。通院しやすい年齢のうちにスタートするのも、良い選択肢だと思います。
副作用
最初は口の中が痒くなるというようなこともあります(ダニの免疫療法でよくある)が、投与方法の工夫や、抗ヒスタミン薬の併用を一時的にすることでほぼ解決できます。
アナフィラキシーなどほ誘発症状は、全く無いとはいえませんが、皮下注射による従来の免疫療法(減感作注射)に比べると、非常に少なく、極めて安全性の高い治療法といえます。
参考になるリンク
当院の受診について
医師からもすすめることがありますが、患者さんがはじめて希望される場合も、まず免疫療法について詳しくご説明します。通常、その日にすぐに開始ということはできませんが、アレルギー科診療のできる日、時間帯においでください。スケジュールでご不明の点はクリニックにお電話でお問い合わせください。
特殊な治療ということなので、開始日には同意書(診療の規則で決められたものです)をいただきます。開始日、その1週間後(5~7日後)には、来院していただく必要がありますが、その後は月1回の通院ができれば大丈夫です。