子宮頸がん予防ワクチン

2023.12.1更新
このページは女子の子宮頸がん予防ワクチンの解説です。男子向けのHPV感染予防ワクチンの解説はこちらをご覧ください。

子宮頸がんは感染症

子宮頸がんの原因は、ほぼ100%がヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染です。多くの場合、性交渉(皮膚や粘膜同士の接触)によって感染すると考えられていて、発がん性HPVは、すべての女性の約80%が一生に一度は感染していると報告があるほどとてもありふれたウイルスです。このため、性行動のあるすべての女性が子宮頸がんになる可能性を持っています。
子宮頚がん予防ワクチン(ガーダシル・シルガード9)で子宮頚がんが100%防げるというわけではないのですが、子宮がん検診と併用することにより、かなりの効果が期待できます。
なお、このワクチンは「感染しても発症を予防する」とか、「発病しても軽く済ませる」ということが目的ではなく、「感染を予防する」ことが大きな目的です。ですから、できれば、セックスを始める年齢になる前(その後では意味がないという意味ではありません)に接種をすることが大切です。

4価ワクチンと9価ワクチンの違い

子宮頸がんを引き起こすウイルスにはいろいろな型があります。2023年4月より、9価ワクチンが導入され、守備範囲がひろがりました

上記の画像が見にくいときは画像をクリックしてください。

4価ワクチン(ガーダシル)は子宮頚がんウイルスのうち4種類の、9価ワクチン(シルガード9)は9種類の型に有効です。なお、6型、8型は低リスク型なので、子宮頚がんの原因というよりも、尖圭コンジローマの原因となります。
少し詳しい図表になりますが、ここをクリックすると、「日本人における子宮頚がんの原因ウイルスの型分布」がご覧になれます。
それをみるとわかりますが、4価のワクチンは、65.4%の、9価のワクチンは88.2%の子宮頚がんの原因ウイルスに有効ということがわかります。
つまり当たり前のことですが、9価ワクチンのほうが、そのくらい守備範囲が広いのです。
それだったら、みんな9価にすればいいじゃないか・・・と、思われるかもしれませんが、そこがスムーズにいかないのが日本らしいところです。

接種スケジュール

上記のように、どちらかを選ぶなら、9価ワクチンですが、接種スケジュールが違います。(2023年4月時点では、どちらも選ぶことができます)

上記の画像が見にくいときは画像をクリックしてください。

9価ワクチン(シルガード9)の場合は、14歳以下で接種を開始すると、接種回数は「6~12ヶ月間隔で2回」でも良いことになります。もしかすると、国や行政としては、この年齢については2回が標準というように誘導するかもしれません。(3回接種しても良いが、2回接種法が標準というような言い回しになるかもしれません)
そもそもどうしてこのような複雑なルールになったのか、実際にはどうすればいいのかわかりにくいと思いますので、次に説明します。

小学校6年生の接種について

子宮頚がん予防ワクチンの定期接種の期間は学年で区切られていて、小学校6年生~高校1年生です。ただ、標準接種年齢というものがあり、それが中学1年生~高校1年生となっているため、横浜市ではそれに合わせて予診票(接種券)の郵送をしているようです。このへんの判断は自治体によって違い、小学校6年生になる直前に郵送している自治体も多くあります。それでは接種は中学生まで待った方が良いのかというと、実はそういうわけではありません。このワクチンは実は9歳から接種可能で、小学校6年生から接種しても中学1年生から接種してもその後の効果には差はないということです。早く接種すると効果が落ちるのではないかという心配はあまりしないでも良いと思います。
以前は、そもそも子宮頚がん予防ワクチンの予診票は市からは郵送されず、もっぱらクリニックに予備としておいてある予診票を使っていましたので、小児科では2種混合のワクチン(11~12歳)にいらした女の子に、「小学校6年生になったら子宮頚がん予防ワクチンをしにきてね」と声をかけることが普通でした。こんどは中学生になってからとはいえ、予診票が送られるようになったのは勧奨という意味では良いのですが、小6で予診票が送られてこないのに、なぜ勧めるのかと言われても困りますし、このあたりのことは人によって感じ方も違うので、少し困っています。
ただ、クリニックには予診票をまとまった部数予備として保管していますので、予診票が送られて来ていなくても、横浜市に住民登録がされている方であれば、接種はできますので、ご安心ください。(日本脳炎の1期を0~2歳で行いたい方が区役所に行って予診票を発行してもらうことがありますが、そのようなことは必要ありません)
そのお子様の成長に合わせ、またご家庭のご都合に合わせ、小学校6年生から中学校1年生ぐらいを目安に、接種を開始されると良いと思います。

当然でるだろうと思う疑問と質問

4価のワクチンを接種している途中から9価のワクチンに切り替えることはできますか?
  • 横浜市に照会したところできるということです。ただし、行政から案内される文書には、途中からの変更は「推奨しない」「望ましくない」というような表現になる可能性があります。その理由については別掲します。
9価のワクチンの1回目と2回目を6ヶ月以上あけて接種した人は3回目の接種を受ける権利を失うのですか?(14歳以下で1回目をした場合)
  • そのようなことはありませんが、おそらく国としては2回で終了というような案内をするだろうということです。 (横浜市のワクチン接種担当部署からの電話による情報で文書ではありません)
  • ただ、もしかすると、後から解釈変更し、3回目の権利はないということになるかもしれません。6ヶ月といっていますが、5ヶ月以上あければ2回「でも」良いというように案内されていますので、もし権利を絶対に確保したいという方は、1回目から5ヶ月たつ日よりちょっと前に、2回目をしておき、3回目を「するべきだ」というグループに入っておくのもひとつの方法かもしれません。接種券(予診票)をもらっていればまず3回目を受けられないということはないと思いますが・・・
4価のワクチンをした人が途中から9価のワクチンにすることは危険なのですか?
  • 現実にはそういうことは全くないと思います。ただ、例えば1回目「麻しん単独ワクチン」→2回目「MRワクチン」という接種方法は、当初は国は認めていませんでした。B型肝炎ワクチンも2社が製造しているのですが、途中でメーカーを変えることは当初はできませんでした。理由はそのようなことをして安全性に問題がないかどうかを検証したデータが国内にないからです。今は、「麻しん単独ワクチン」自体の流通がないこともあり、そのようなことは気にせず「MRワクチン」を接種していますし、B型肝炎については、工場が熊本地震で被災したことがきかっけで途中からの変更が可になり、そのまま今に至っています。インフルエンザ、四種混合、MRワクチン、おたふくかぜワクチン、なども複数のメーカーが製造していますので、違うメーカーのワクチンが同じ方に使われることも普通にあります。今回は変更を認めないのではなく、認めるが推奨はしないというような表現で国の従来からの立場とのバランスをとっているのだろうと思います。
どうして14歳以下は2回接種でよく15歳以上は3回接種なのですか?
  • 海外のデータですが、4価ワクチンの頃から、14歳以下であれば、6ヶ月以上あけて2回接種をすることで、0→2→6ヶ月の3回接種法と同等の有効性があるというデーターがありました。このことは、当院では以前からホームページでお示ししていたので、14歳以下で6ヶ月以上あけて2回接種をしておき、9価ワクチンがでるのを待っていた方も多いと思います。今回、9価ワクチンで、日本でも14歳以下の方を対象にして、治験を行い、有効性に差がないというデータが得られたため、14歳以下は2回接種法でもよいということになりました。15歳以上場合は、治験をしていないので、4価ワクチンと同様に、 0→2→6ヶ月の3回接種法のままということなのだと思われます。 ですので、15歳以上だと(14歳以下に比べて)ワクチンの効果が得にくいので3回接種が必要だというわけでもないのだろうと(個人的には)思います。しかし、15歳以上であれば、セクシャルデビューをする子も徐々に増えてきますので、そういう意味で効果に差がでることもあるかもしれません。おそらく性交渉の有無という条件を揃えれば14歳以下でも15歳以上でも有意差はないだろうと思います。しかし、年齢により効果に差がある可能性が全くないということもいえませんので、15歳以上になって初回接種をされた方は、3回接種として良いと思います。
1回目から6ヶ月以上あけて2回目を接種しておき、その後ある程度の期間をあけて3回目を接種するということはできませんか?
  • 行政としては推奨しないということだと思いますが、できないわけではないということです。(文書にはしていただけませんが、電話で確認しました) でも、本当は理想的かもしれませんね。
14歳以下の方が2回でも良いという根拠になったデータは何なのですか?
  • そこが問題ですね。2回接種後1ヶ月後の抗体価が十分あがっていて、3回接種した人と比べて差がなかったということが根拠のようですが、それは2回接種した直後のことなので、長期的にどうかということは調査していませんし、それだけを根拠にしてよいのかどうか、疑問はあります。

厚生労働省からの案内リーフレットなどへのリンク

さすがに、最近は否定的なことは書いていません。 参考までに過去のリーフレットは、

2013年版

2018年版

クリックするとリーフレットが読めます。
以前はそのリーフレットを患者さんにお渡しすることが接種する前に医療機関の義務になっていました。
私たちは、「国のリーフレットはこう書いてあるけれど、それはこういう理由でおかしいのです」というような説明をしなくてはなりませんでした。
  • 2022年度までは、当院でも安全性の説明を詳しくしていました。今は必要性がなくなってきたので、割愛していますが、ご関心のある方はここをクリックして以前のホームページをお読みください。

横浜市からの案内のページへのリンク

  • 子宮頚がん予防ワクチンに関する広報サイト
    • 公式なものです。
  • キャッチアップ接種について
    • 「上記リンク先では、平成9年(1997年)4月2日~平成18年(2006年)4月1日生まれのご本人と保護者の方へ」と書かれていますので、そのまま読みますと、令和4(2022)年度に高校1年生の方ははずれてしまいます。しかし、平成18年度生まれの方と平成19年度生まれの方は、定期接種の接種対象年齢を超えても、令和7年3月末までキャッチアップ接種として公費で接種することができますと、横浜市から回答がありました。下の図表を参考にしてください。
    • 画像が小さく読みにくい場合は画像をクリックしてください。

予約(在庫確保)・公費助成・任意接種の料金・お子さまおひとりでの来院について

・予約
現在は、接種希望の方も増えてきましたので、子宮頚がん予防ワクチンについては確保のご依頼のお電話は必要なくなりました。シルガード9(9価ワクチン)については、通常のワクチン接種と同様に、日時の予約のみおとりください。ただし、ガーダシル(4価ワクチン)については接種希望の方が減少していますので、クリニックにお電話でお確かめください。なお、インフルエンザワクチンについては、例年ワクチン確保予約をしていただくようにおすすめしています。

・公費助成(定期接種)
小学校6年生~高校1年生相当の女子(横浜市民)は無料になります。その他、国で認めたキャッチアップ接種、市で認めたコロナ禍による延期の方も無料です。

・任意接種
自費で接種する場合 シルガード9は26150円(税込)、ガーダシルは15700円(税込)(ガーダシルは通常は在庫がありません)です。横浜市外の方が定期接種として受ける場合はこの料金よりも高くなります。

お子さまおひとりで来院される場合
やむをえずお子さまがおひとりで来院される場合の手続きについて説明しています。(13歳以上)